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2021.04.30

【順天堂大学水泳部 #2】原点に立ち返って欲しいと願う指導者の思い - 自分自身と向き合えるチャンスがここにある

総勢47名の順天堂大学水泳部。そんな水泳部に所属する選手、スタッフそれぞれの特徴や個性に寄り添った指導にあたるコーチ陣。このコロナ禍で目標も定まらなくなってしまった選手たちに届けたいその思いとは…
#2では日々選手と向き合うコーチ陣、嵯峨基コーチ、安藝文哉コーチの2名にお話しを伺った。

― まずは部活動を始動するにあたって心掛けていることは何ですか?

嵯峨 基コーチ:私自身大学時代は趣味で水泳をしていた程度の中でコーチングに携わっていることもあり、選手たちが競技力のある人やオリンピアンからの指導を求めているのではないかな…と思いながら指導にあたり始めていた。
ただ自分が他のコーチと何が違うのかと言えば、大学時代は医療系の勉強をし国家資格を持った中でコーチングにあたれているということ。ここは差別化できているのではないかと自負している。
そのため選手の身体をケアの点からも見て、身体の状態から泳ぎにどのようにつながっているかなど医学的な視点とコーチングの視点、両点から見ることができるということは個人的に強みだと思っている。
前段で話した通り選手の身体のケアもサポートしつつコーチングを行っているが、選手の水中での感覚というのは全ては分からない、理解してあげられないと思っている。
そのためどちらかというと泳ぎを教える、というよりかは選手に意識させる、意識させる手順というのを全面に伝えられるような練習メニューの作成を心掛けていて、選手にバランスや感覚を自覚してもらえるような練習が提供できるような指導を行っている。
また年齢が近いということも大きなプラス要因だと思っている。
プライベートでも仲良くしたり、自分自身も選手たちを仲の良い後輩だと思って接していたりするので、そういうところから信頼感を得られるようにコミュニケーションも重要視している。

 

安藝 文哉コーチ:大きく分けて3つ心掛けている。1つは『選手の意見を尊重する』ということ。
選手の意見は否定せず、まず一度はやらせてあげる。それが合っている、間違っているは二の次でまず選手にやらせてみて良かったら良かったなりの、悪ければ悪かったなりの話を聞くようにしている。
2つ目は『選手自身が考え行動できるように意識的に指導する』ということ。一応練習メニューは組んではいるが、あくまでそれはその選手になかった色を付け足すくらいの感覚で、その選手にとって新しい感覚や知識の1つの足しになってくれればと思っていて…自分で考え、自分で練習も組み立ててくれれば良いと思っている。自分で作成した練習メニューの通りに選手がやってくれなくとも、とやかく言わない!
3つ目は『褒める、認める』こと。目に見えて意識的にやっていることは選手が良いタイムを出したときや良い声出しなどをしていたときは遠くから褒める、他の選手やスタッフ人にも聞こえるように褒めるように心掛けている。
反対に少し気が抜けてしまっている選手などには遠くから人伝えで声をかけるのではなく、なるべく近くに寄って声がけをするように意識している。

― 今までで指導にあたってきて印象に残っている出来事はありますか?

安藝 文哉コーチ:順天堂大学水泳部でコーチングを始めて3か月くらいで迎えた大事な大会。ある選手に日本選手権の出場記録を0.01秒で切らせてあげられなかったこと。
今でもそのレースはしっかり覚えていて、切らせてあげられたのではないか、何か他にできることがあったのではないか…と非常に心残りがある。
選手ももちろん悔しかったと思うがコーチである自分自身もとても悔しい思いをしたことを覚えている。
 

 

嵯峨 基コーチ:私も同じく他の選手で100分の3秒、日本選手権の出場タイムを切らせてあげることができなかったレースがすごく印象に残っている。
この一件でコーチングするにあたっての考えを見直したきっかけにもなった。
今まで『上級生にはあまり伝えることは無いだろう』、『自分が指導しなくてもある程度自分の考えがあるだろう』という先入観があり、本当は伝えたかった事、言いたかったことを伝えずにいた。
そんな中でのレースだったので自分は自分なりにあの時伝えていたら…あの時言ってあげていたらタイムが切れていたのではないか…という後悔の念に駆られた。
それ以降は選手の特性に合わせ、自分自身も後悔しないように伝えたいことは伝えるように心掛けた。
結果、その後に迎えたインカレではチーム全体のベスト率も上昇。
選手の意見を尊重しすぎることも良くないので自分の意見も伝えつつ、選手とディスカッションしながら選手が決めることは判断を委ねながら指導ができるよう心掛けている。

― 大会も少しずつ戻ってきてはいますが、このコロナ禍の中で部活動はどうあるべきだと思いますか?

嵯峨 基コーチ:そこまで俯瞰で見たことは無かったがやはりどうしても目的を持って何かに取り組むことが制限されてしまったり、自分自身で制限をしてしまっている情勢の中で特に大学生、学生は『部活動』というきちんと目標に向かって取り組める環境があることは非常に有意義なこと。これは将来のことだけでなく自分の心、精神的にも成長できる機会にするべきだと思う。
ましてや今まで誰も経験したことのない、このような状況の中で部活動に励んでいた学生はどの選手よりも苦労も多くしたと思うが、でもそこであきらめず取り組んだこの過程は今後自分たちに降りかかるどんな厳しい環境にも立ち向かっていける、自分で考えて行動ができる気持ちを養うことができたのではないかと思う。
そういった観点でもこういったコロナ禍であっても、できる範囲でスポーツに取り組んでいくことが重要なのではないかと考えている。

― 今コーチから学生のみんなへ届けたい、メッセージをどうぞ。

安藝 文哉コーチ:コロナで試合も軒並み無くなってしまい、改めて「自分はなぜ水泳をやっているのか…」と考える機会が増えたことでしょう。もともとみんなは水泳が好きだから水泳を始めているはず。
しかし、競技を突き詰めていく中で『結果を残したい!』『パフォーマンスをあげたい!』という思いが強くなってしまうがあまりに根本の『水泳が好き』ということを忘れてしまって、水泳が苦しいものになっている人が多くいるように感じている。
ただ今回のこのコロナを通して、改めて自分が水泳をやる目的、目標を再認識し水泳に苦しめられないように今一度心から水泳を楽しめるようになってくれたらもっと今以上に結果も伴うし、水泳を通してもっと色々なことが学べるのではないかと思う!

嵯峨 基コーチ: そもそも「なんで水泳をやっているのだろう?」と今一度考えて欲しい。
別に大学で水泳をやっていなくても生きていけるし、仮にインカレで優勝できたとしてもその優勝経験は社会において必ず必要な経験でもない。ではなんでこんなに毎日苦しい思いをして練習をしているのか…それはきっとタイムや結果を残すだけではないはず!
社会に出て例えば人間関係にとってみれば今の水泳部を小さな組織として捉えると生活態度や立ち振る舞いは必ず活きてくる。
インカレで優勝することが社会に出て直接活きるのではなく、そこまでの過程がどのように今後に活かすことができるのかを考えながら日々の水泳に向き合ってほしい。

 
【順天堂大学水泳部 #1】はコチラ>>
【順天堂大学水泳部 #3】はコチラ>>
 

<部活動紹介>
順天堂大学 水泳部
順天堂大学水泳部は、監督・コーチ、スタッフなどを含め総勢47名で活動している。今年度のチームスローガンは選手、スタッフ、学年を超えた繋がりや関係、また目標に向けチームで迎え撃つことで結果に結びつけるという思いから『結(むすび)』。2011年から関東1部校として数々の主要大会にて結果を残してきた順天堂大学水泳部が今シーズンも新たな変革を求めチーム一丸となり闘っていく。

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