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2021.04.16

【順天堂大学水泳部 #1】制限下の中それぞれの立場で抱えていた不安 - 自分自身と向き合えるチャンスがここにある

総勢47名の順天堂大学水泳部。自主練でさえもできることが限られてしまう水泳という競技。学内での練習に大きな影響が出ている中、彼らはどのように過ごし、どのような不安を抱えていたのか。新様式で迎える新たなシーズンを前に3年生2名、コーチ2名それぞれの立場から話を聞いた。

― 緊急事態宣言発令中の今、部活動の活動状況はいかがですか。

嵯峨 基コーチ:現在順天堂大学スポーツ健康科学部の体育系部活動では部活動を行う上で段階分けがされており第6段階を正常化とし、そこを目指し第3、4と段階を上げていきながら部活動を再開中。以前緊急事態宣言が出たときは全く泳げない状況が続いていたが、現時点(※注:2021年2月取材時)では第5段階が継続となっておりプールに限っては、泳げる人数は14名まで、各コース2名ずつ、その際に立ち会っても良いスタッフ人数は6名までの計20名までという制限下の中で、部活動を行っている。

― 第3段階、第4段階のフェーズの時はどのくらい制限されていたのですか。

嵯峨 基コーチ:もっと人数も制限され、泳げる時間までも決められてしまっていた。例えば第3段階の際にはマネージャーをはじめとした学生スタッフの立ち合いは禁止されており、各自が自主練習をできるのみ。その自主練習を行う際は学内教員が立ち会っていなければプールを使うことができない状況だった。そのため先生方が帰る時間が早ければ放課後の練習はできないというような状況…またコーチによって作成された練習メニューを複数人で同時実施することはリスクが高いと判断され、禁止されてしまっていた。

― 自主練習や制限が続く中での部活動について、どのように感じていましたか?

渡沼 悠我さん:練習メニューが課されないので全て自分で考え、組み立てて練習をしなければならなかったことは負担ではあったが逆に今となっては良い機会にできたと思っている。その期間の取り組みや考えていたことがすごく今に活きていると感じている。

中本 晃文さん:僕自身は泳げなかった期間で、モチベーションがかなり低下してしまい引退も考えた。ただ少しずつ制限が少なくなり練習メニューは無い中でも泳げるようになってからは、やはり自分は泳ぐことが好きだな、競技が好きだなと再認識できた良い期間になったと感じている。

― 全く泳げなくなってしまった時期は1回目の緊急事態宣言が発令された4月からの2か月間。この後に控える数々の主要大会への不安はありましたか。

渡沼 悠我さん:その当時はまだ自分自身は3年生になったばかりだったので最悪この後に控えるインカレもまだもう1年チャンスがあるから…という思いもあり、やれることをやるのみだと思っていた。その年のインカレがあるかないかは気にはなったがそこに不安は覚えなかった。とりあえず今限られた時間、環境の中でやれることをやっていた。

中本 晃文さん:インカレが開催できると見越してとりあえずはできる練習をしていた。自身でまずは身近な大会に標準を設定し練習に取り組むようにはしていた。

― それぞれの選手が様々な不安や思いを抱える中で過ごしていたこの時期、コーチの方々はどのように感じていましたか。

嵯峨 基コーチ: 練習がまともにできない状態を一番近くで見ていた中で、選手自身も大会の開催有無や練習について不安を抱えていたが個人的にも大学院への通学をしながらのコーチのため、このまま大会などができないまま大学院を卒業しコーチングも引退しなければならなくなってしまうのではないか…という不安がのしかかってきた。
ただ何のためにコーチングをしているのかというと『選手にベストタイムを出してほしい』から。色々できることが無いか模索を続けていたが自分も何をするべきか何をしたら良いか分からず、何も力になれなかったな…と感じているのが正直なところ。
きちんと目的をもって練習に取り組める選手だけが頑張れるような状況になってしまっており、思い悩んでしまっている選手に対して自分に何ができるだろうかと考えた時、面談をすることくらいしかできなかった。

安藝 文哉コーチ:コーチとして一番コーチらしいことができなかった期間だった。自分の中の位置づけとしてコーチングは選手が目標を達成するために寄り添うこと。選手自身がここを目指したい!という試合が開催されるか分からない状況の中でコーチとしても『ここを目指して頑張ろう!』とはっきり言えないことが苦しかった。選手自身もあるかどうか分からない試合に向けて『頑張れ!』と言われることほど酷なことは無いのではないかと思い、もどかしさを感じていた。

― それぞれが不安を抱えていた中で、対してコロナ禍になったことでのプラス要素は何かありますか。

中本 晃文さん:練習が再開できるようになってひとつの主要大会に標準を合わせ、練習を積みはじめた矢先、その目指していた大会も相次いで中止になってしまいかなり参ってしまった…でも競技をすること、普段の練習をやることに有難さをすごく感じることができた。
『大会があるから練習している』ではなく『泳ぐことが好きだから練習している』という考えに変えていくことで改めて水泳が好きだということをこの期間を通じて再認識することができた。

渡沼 悠我さん:例年だと試合や合宿を重ねていくごとにチーム力が上がっていくのを感じられるが軒並み大会も無くなり合宿にも行けなくなってしまったことで、チーム内でのコミュニケーションが少なくなってしまっていた。
現在部内も距離や種目によってチーム分けされており、自分が属していないチームの1年生とはほとんど話す機会が無い状態…チームで見たときには大会や合宿に限らず普段の日常でのコミュニケーションの大切さ、練習時の積極的な声掛けが重要だと気付くことができた。

― そういった状況の中でこれから先、後輩たちとコミュニケーションを図っていくうえでどのようなことを心がけていきたいですか。

渡沼 悠我さん:僕自身、大学に入学してからすごく先輩方に面倒を見てもらい、たくさんのことを教わった。だからこそ、この4月に入学してくる1年生だけでなく今既に共に活動している後輩たちにも自分が教わったことにプラス自身の経験も踏まえ下に下に伝えていきたいと強く思っている。

― コミュニケーションという点でコーチという立場からも今までとは違った状況の中、どのように図っていかなければならないとお考えですか。

嵯峨 基コーチ:水泳部は一応距離や種目によってチーム分けはされているものの、それぞれのチームの練習の切り替えのタイミングがあるのでそのタイミングでコミュニケーションを取れるよう心掛けている。
ただマスク越しの会話で表情もあまり分からず、コーチの方からの声掛けも感染予防という観点であまり注力しない方が良いのではないか…という葛藤もあり自分の担当しているチーム以外の選手とのコミュニケーションがあまり取れていないのが現状。
でもそこはもう割り切って担当以外の選手にはその担当コーチに密にコミュニケーションを取ってもらうようコーチ・スタッフ内で共有している。

安藝 文哉コーチ:嵯峨コーチも言っているように今はそれぞれの担当チーム以外の選手について無理にコミュニケーションを図ろうとすることは逆効果だと思っている。複数の指導者から意見やアドバイスを受けることで選手自身が取捨選択をしてくれるのであれば良いが、基本は担当以外の選手たちからアドバイスを求められたり、相談されたりする時意外は一番理解している担当コーチからのアドバイスや意見を一番に考えて欲しい!と思っている。そんなこともあり無理にこちらから部内の選手全員にコミュニケーションを図ろうとは考えておらず担当している選手に対しては常に1人ずつ1日に1回は会話、コミュニケーションを取れるように意識づけている。
反対に担当していない選手とは水泳や練習の事ではなく、他愛のない話や趣味の話などで距離を詰められればと考えている。
 

  
【順天堂大学水泳部 #2】はコチラ>>
  

<部活動紹介>
順天堂大学 水泳部
順天堂大学水泳部は、監督・コーチ、スタッフなどを含め総勢47名で活動している。今年度のチームスローガンは選手、スタッフ、学年を超えた繋がりや関係、また目標に向けチームで迎え撃つことで結果に結びつけるという思いから『結(むすび)』。2011年から関東1部校として数々の主要大会にて結果を残してきた順天堂大学水泳部が今シーズンも新たな変革を求めチーム一丸となり闘っていく。

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